「ガソリン代も上がっているし、原油に投資すれば儲かるはず」と考えてUSOを買おうとしていませんか。実は、原油の投資信託には「持ち続けるだけでお金が減っていく」という恐ろしい罠が隠れています。この記事では、初心者が見落としがちな価格が下がる仕組みと、損をしないための付き合い方を分かりやすくお伝えします。
原油ETF(USO)を長期保有すると資産が目減りしてしまう理由
原油の価格が上がっているのに、自分の持っているUSOの価格がさっぱり上がらない。そんな経験をして首をかしげる投資家は少なくありません。これはUSOが「本物の原油」を倉庫に持っているわけではなく、「先物」という特別な約束を売り買いしているからです。この仕組みが、長期保有をする私たちにとって大きな重荷になります。
毎月の「乗り換え」で財布からお金が逃げていく
USOは「先物」という期限付きの契約で運用されています。期限が来ると、今の契約を売って、次の期間の契約を買い直さなければなりません。
この乗り換え作業を「ロールオーバー」と呼びますが、ここで毎回コストが発生します。期限が来るたびに少しずつ手数料や差額を支払っているような状態なので、持っているだけで資産が削られていきます。
本物の原油価格が上がってもETFが上がらない怪現象
ニュースで流れる「原油先物価格」と、USOの価格は必ずしも一致しません。むしろ、長期間で見るとUSOの方が圧倒的に低いリターンになることがよくあります。
- 原油価格は10年前と同じ水準
- それなのにUSOの価格は半分以下
- この差が仕組みによる「目減り」の正体です
現物の原油が値上がりしても、ETFの価格がそれに追いつけないのは、運用中に発生するロスが積み重なっているからです。
手数料だけじゃない「目に見えないコスト」の正体
運用会社に払う信託報酬以外にも、先物市場特有のコストが重くのしかかります。それは、売買する際のスプレッド(売り値と買い値の差)や、市場の歪みによる損失です。
これらのコストは表立って「手数料」として引かれるわけではありません。日々の価格の動きの中にこっそりと溶け込んでいるため、気づかないうちに資産が目減りする原因になります。
コンタンゴによって価格減価が起きる先物ならではの仕組み
「コンタンゴ」という言葉を聞いたことがありますか。これは先物投資における最大の敵です。簡単に言うと「今の価格よりも、将来の価格の方が高い」という状態を指します。原油の世界ではこれが日常的に起きており、USOはこの仕組みのせいで自滅するように価格を下げていくのです。
「安いときに売って高いときに買う」という損な取引
コンタンゴの状態では、期限が近い「安い契約」を売り、期限が遠い「高い契約」を買い直すことになります。投資の基本は「安く買って高く売る」ですが、その真逆を毎月強制的にやらされるわけです。
例えば、40ドルで売った直後に、同じ量の原油を42ドルで買い直すようなイメージです。この2ドルの差額はどこにも消えず、そのまま投資家の損失として積み上がっていきます。
期限がある先物だからこそ逃げられないルール
先物には必ず「満期」があります。現物の原油を受け取るわけにいかないUSOは、どんなに価格が不利でも、期限が来れば今の契約を手放さなければなりません。
「今は高いから買うのを待とう」という柔軟な判断ができないのが、この運用の辛いところです。市場がコンタンゴである限り、ルールに従って損な取引を繰り返すしかない宿命を背負っています。
倉庫代や保険料が先物価格を押し上げるカラクリ
なぜ将来の価格の方が高くなるのでしょうか。それは、原油を保管しておくには「お金」がかかるからです。巨大なタンクのレンタル代や、火災保険料などが将来の価格には上乗せされています。
- 倉庫代がかさむほど先は高くなる
- 保険料もコストとして加算される
- 投資家は間接的にこの「保管料」を払わされている
現物を持たずに先物で投資するということは、誰かが原油を預かってくれるためのコストを肩代わりしているのと同じなのです。
原油ETF(USO)が抱えるコストと長期保有を危険にする落とし穴
「少しくらいならコストがかかってもいい」と思うかもしれません。しかし、USOが抱えるコストは一般的な投資信託に比べて非常に割高です。さらに、時間の経過とともに価格がボロボロになっていく性質があるため、数年単位で持つのはあまりにもリスクが高い選択と言えます。
年率0.60%という高い経費率がじわじわ効いてくる
USOの運用にかかる経費率は年0.60%です。米国株の優良ETFであるVOOなどが0.03%程度であることを考えると、20倍近いコストがかかっています。
さらに、先ほど説明したロールオーバーのコスト(年間で数%〜10%以上になることもあります)が加わります。目に見える手数料と目に見えないコストを合わせると、持っているだけで毎年10%以上のハンデを背負うことも珍しくありません。
| 項目 | 内容 | 他のETFとの違い |
| 正式名称 | United States Oil Fund, LP (USO) | 原油先物を専門に扱う特殊なファンド |
| 経費率 | 年0.60% | 一般的な株式ETFよりかなり割高 |
| 運用方法 | 複数の限月の先物を組み合わせて運用 | 2020年以降、より分散された運用へ変更 |
| 主なリスク | コンタンゴによる価格の減価 | 株とは違い、時間とともに価値が削られやすい |
10年持っても元本が半分以下になるシミュレーション
もし原油価格が10年間ずっと一定だったとしたら、USOの価格はどうなるでしょうか。答えは「ほぼ確実に大暴落している」です。
コンタンゴの影響で毎年少しずつ減価していくため、たとえ原油相場が荒れなくても資産は溶けていきます。長期保有を前提にしたシミュレーションをすると、右肩下がりの悲惨なグラフになることが歴史的に証明されています。
予想が当たっても儲からない「時間」の罠
「半年後に原油は上がる」という予想が的中したとしても、儲かるとは限りません。原油価格の上昇分よりも、持っていた期間の減価(コスト)の方が大きければ収支はマイナスです。
- 予想:原油が10%上がる
- 結果:半年で10%上がった!
- 現実:USOの減価が12%だったので、資産は2%減った
このように「方向は合っているのに損をする」というイライラする展開になりやすいのが、先物ETFの落とし穴です。
コンタンゴの影響を最小限にするための取引のコツ
それでも「原油のチャンスを逃したくない」という場合は、戦略を変える必要があります。USOは、株のように「買って寝かせておく」ための道具ではありません。その特性を理解した上で、短期間の勝負に徹することができれば、強力な武器にもなり得ます。
数日から数週間の短期決戦に割り切って使う
USOで利益を出したいなら、長く持っても「数週間」までにするのが無難です。コンタンゴによる減価は、毎日少しずつ、じわじわと効いてくるからです。
数日間の急騰を狙ってサッと利確するような、デイトレードに近い使い方が最も適しています。「長期積立」という言葉はこの銘柄には存在しないと肝に銘じておきましょう。
「バックワーデーション」という追い風の時期を見極める
稀に、コンタンゴとは逆に「将来の価格の方が安い」という状態になることがあります。これをバックワーデーションと呼びます。
この時期にUSOを持つと、逆に乗り換えで利益(ロール利得)が出るようになります。専門的なサイトで「先物の形状」を確認し、バックワーデーションの時だけ参加するのが、賢いプロのやり方です。
ニュースが出てから飛びつかないための心構え
地政学的なニュースで原油が急騰したとき、慌ててUSOを買うのは危険です。ニュースが出た瞬間には、すでに価格に織り込まれていることが多いからです。
- 戦争や紛争のニュースで急騰
- 翌日には落ち着いてコンタンゴによる減価が再開
- 高値づかみをして、そのままズルズル下がる
感情で動くのではなく、市場の需給や先物のコスト構造を冷ややかに分析してからエントリーする余裕を持ちましょう。
原油ETF(USO)以外でエネルギー投資を検討する方法
原油の値上がりを狙う方法は、USOだけではありません。 बरन्、私たちのような個人投資家にとっては、USOよりももっと安全で、しかも配当までもらえる魅力的な選択肢が他にたくさんあります。無理に難しい先物ETFに挑む必要はないのです。
シェブロンやエクソンモービルのような石油株を持つ
原油価格が上がれば、石油を掘り出して売っている会社の利益も増えます。シェブロン(CVX)やエクソンモービル(XOM)といった巨大石油企業の株を持つのが、最も王道なやり方です。
これらの株はUSOと違って減価しませんし、むしろ毎年たっぷりと配当金を出してくれます。原油の恩恵を受けつつ、配当をコツコツ貯められる石油株投資の方が、精神的にもずっと楽です。
減価しにくいエネルギーセクターETF(XLE)の活用
特定の1社を選ぶのが難しいなら、石油関連企業を詰め合わせたETFである「XLE」がおすすめです。これは先物ではなく「企業の株」を寄せ集めたものです。
中身はエクソンモービルなどが中心で、原油価格と連動しながらも、コンタンゴによる資産の目減りに怯える必要がありません。エネルギー市場全体の成長に乗りたいなら、先物ETFよりもセクターETFの方が圧倒的に保有しやすいはずです。
先物ではなく現物に近い動きをする投資先の探し方
他にも、原油の生産に関わるインフラ企業(パイプライン会社など)に投資する「MLP」という選択肢もあります。これらも株と同じように取引でき、高い配当が魅力です。
- 石油を運ぶパイプラインを運営
- 原油価格に左右されつつも安定した手数料収入
- コンタンゴの影響を受けない
「原油に投資する=先物を買う」という固定観念を捨てて、自分が一番納得できる仕組みの投資先を選びましょう。
長期保有は危険でも短期ならチャンスがある原油ETF(USO)の使い分け
ここまでUSOの怖さを書いてきましたが、決して「ダメな商品」というわけではありません。世の中に残っているということは、それなりの使い道があるからです。特定のタイミングで、リスクを承知で大きな利益を狙いに行く。そんな使い分けの場面をご紹介します。
地政学ニュースで一気に吹き上がる爆発力を狙う
中東情勢の悪化などで供給不安が起きると、原油価格は一晩で10%以上も跳ね上がることがあります。この時の爆発力は、普通の株には真似できません。
こうした突発的なイベントを予測して、あるいは起きた直後に超短期で乗るなら、USOは最高のツールになります。一瞬の輝きを掴み取るための「狩り」の道具として割り切るのが正しい姿です。
インフレ対策としてピンポイントでポートフォリオに入れる
インフレ(物価上昇)が止まらないとき、原油は真っ先に値上がりする資産の一つです。資産のほんの一部を、数ヶ月だけ守るためにUSOに移すという使い道があります。
ただし、あくまで「一時的な避難所」です。インフレが落ち着いたらすぐに資産を元の場所に戻さないと、コンタンゴの重みで避難所ごと沈んでしまいます。
下落局面で利益を出す「空売り」やインバース型の検討
コンタンゴで勝手に下がっていく性質を逆手に取り、USOを空売りする(あるいは下がると儲かるインバース型を買う)という上級者向けのテクニックもあります。
「持っていれば下がる」という性質は、売り手からすれば心強い味方になります。原油価格が横ばいであっても、時間の経過による減価分だけ利益が出るという、不思議な勝ち方が可能になります。
原油ETF(USO)の運用が大きく変わった2020年の教訓
最後に、USOを語る上で避けて通れない「事件」を振り返ります。2020年、原油価格が史上初めて「マイナス」になるという信じられない出来事が起きました。この時、USOは存続の危機に立たされ、運用ルールを根本から変えることになったのです。今のUSOが昔とどう違うのかを知っておきましょう。
マイナス価格事件で学んだ先物投資の恐ろしさ
2020年4月、コロナ禍で原油の需要が消え、保管場所もパンパンになりました。その結果、原油を「お金を払ってでも引き取ってほしい」という人が現れ、価格がマイナス40ドルまで暴落しました。
この時、期限直前の先物ばかり持っていたUSOは大パニックになりました。「投資したお金がゼロになるどころか、マイナスになるかもしれない」という恐怖は、先物運用の危うさを世界に見せつけました。
期先まで分散してリスクを抑える今の運用ルール
この事件を受けて、USOは運用方法をガラリと変えました。それまでは「翌月の契約」だけを100%持っていましたが、今は数ヶ月先、数年先の契約まで分散して持つようになっています。
これにより、一箇所の暴落でファンドが吹き飛ぶリスクは減りました。しかし、安全性が高まった一方で、皮肉なことに原油価格の動きに対するキビキビとした連動性は少し失われてしまいました。
ルールが変わっても消えない「価格減価」の宿命
運用ルールが改善されたとはいえ、先物を使っている以上「コンタンゴによる減価」からは一生逃げられません。むしろ分散したことで、コストの構造がより複雑になった側面もあります。
- 以前よりは破綻しにくくなった
- でも、持っていれば減価するのは変わらない
- 結論として、やっぱり長期保有には向かない
どんなに形を変えても、中身が先物である限り、時間は私たちの味方をしてくれません。この冷酷な事実を忘れないようにしましょう。
まとめ:原油ETF(USO)の特性を理解して賢く立ち回る
原油ETF(USO)は、非常に個性の強い投資先です。初心者向けの「コツコツ投資」とは真逆の場所にいる商品だということが、お分かりいただけたでしょうか。最後に、大切なお金を守るためのポイントをまとめます。
- USOを1年以上持つのは、コンタンゴによる目減りのせいで非常にリスクが高い。
- 「安い期近を売って、高い期遠を買う」ロールオーバーが、資産をじわじわ溶かしていく。
- 原油そのものの価格が上がっても、ETFの価格が追いつかない「乖離」が起きやすい。
- 年率0.60%の経費率に加え、目に見えない先物取引コストが重い。
- 投資するなら数日から数週間程度の短期決戦に限定し、引き際をあらかじめ決めておく。
- 長期でエネルギーに投資したいなら、石油会社の株(CVXやXOM)やセクターETF(XLE)が有利。
- 2020年の教訓から運用は分散されたが、減価し続ける宿命は今も変わっていない。
原油は世界経済の血液であり、魅力的な投資対象であることは間違いありません。しかし、USOという道具は「諸刃の剣」です。その特性をしっかりと理解し、自分の投資目的と合っているかを冷静に判断してください。
